2006年01月26日

さようなら親父 -20-

病院に顔を出すと、同室の人たちを気遣って、父も一緒に休憩所に付いてきた。
それほど父は元気がよさそうだった。いや、よかった。

父と次女との初の対面である。
父はやさしくまだ小さな下の子を抱いた。
上の子とは丁度半年ぶりである。
半年前の4月に妻が妊娠中なので、しばらく帰れなくなるということで、お墓参りがてら帰郷した。
思えばその頃から、父は具合が悪そうだった。
「横になっていれば楽だ」と言っていた。

父は次女とは初めて会った感じがしないようだった。
たびたび写真で見ていて、どれくらい大きくなっているのかが見当がついていたからである。
上の子は逆に久しぶりに会う父に怖そうな表情を見せ、差し出す父の手を避けるようにして、母親にしがみついた。
下の子はまだ、3ヶ月足らずなのに父に笑顔を見せた。
死を間近に控えたときと同じような表情だった。

子供と会わせて元気にさせた反動で、体力が弱くなるのを懸念して、私は時間を気にしていた。子供のほうも、東京からの長旅で疲れる頃であったため、短い時間のひと時であったが、私の実家に引き上げることにした。それでも父は十分に満足したようだった。父を病院に残して。

父は抗がん治療の間、体の中に流し込まれる抗がん剤による苦しみと戦っていた。時には白血球の値が下がり、白血病のような症状になったり、血小板の値も下がったりして、個室に隔離されるなどの処置をとっていた。
その間、母はひどく心配し「もうだめだ、もうだめだ」と言いながら、私に連絡してきた。
posted by センセイジンゴ at 16:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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